ChatGPTで知られるOpenAIのサム・アルトマンCEOは、4か月ぶりに自身のブログを更新しました。タイトルは「Reflections(振り返り)」。その中で、ChatGPTのリリースから2年間を振り返りつつ、AGI(汎用人工知能)の完成を示唆し、次なるフェーズであるASI(超人工知能)の開発に取り組んでいることをほのめかしました。
この「Reflections」というタイトルには、単にOpenAIの激動の2年間を振り返るという意味だけでなく、静かに訪れたシンギュラリティ(技術的特異点)の地点から、人類全体の歴史を振り返るというニュアンスも含まれているように感じられます。もしかすると、このブログ記事は後に「歴史を変えた文章」として記憶されるかもしれません。
ブログ記事の引用とその解釈
アルトマン氏のブログには以下のような一節があります。
"We are now confident we know how to build AGI as we have traditionally understood it. We believe that, in 2025, we may see the first AI agents “join the workforce” and materially change the output of companies.""We are beginning to turn our aim beyond that, to superintelligence in the true sense of the word. We love our current products, but we are here for the glorious future. With superintelligence, we can do anything else. Superintelligent tools could massively accelerate scientific discovery and innovation well beyond what we are capable of doing on our own, and in turn massively increase abundance and prosperity."
(日本語訳)
「我々は今、従来の理解に基づくAGIの構築方法を確信しています。2025年には最初のAIエージェントが労働力に加わり、企業の生産性を大きく変えると信じています。」「私たちは、その先にある真の意味での超知能(ASI)を目指し始めています。現在の製品を愛していますが、私たちは輝かしい未来のために存在しています。超知能を持つツールは、科学的発見や技術革新を大幅に加速させ、人類の手で達成可能な範囲をはるかに超える可能性があります。そして、それは豊かさと繁栄を飛躍的に増大させるでしょう。」
このメッセージから読み取れる重要なポイントは2つです。
AGIの構築はすでに完了している
次なる目標はASI(超人工知能)の開発である
これまでAGIの到来については、古くは2045年説から始まり。ソフトバンクの宮川潤一CEOの「2025年説」や、イーロン・マスクの「2025年内にAGIが登場する」という予測がありました。
私も昨年12月に行った大学の講義において、半導体の性能向上率や出荷数、そしてOpenAI ChatGPTの開発速度など、さまざまなデータを総合的に分析しました。その結果、AGI(汎用人工知能)はすでに完成していると考えるべきである、という見解を学生たちに伝えました。そして、このサムアルトマンのブログではAGIがすでに完成していることが暗に示されており、次のフェーズとしてASIの開発に焦点を移していることが明らかです。
以下で技術的特異点を説明します。
技術的特異点とは
技術的特異点(ぎじゅつてきとくいてん、英語: technological singularity〈テクノロジカル・シンギュラリティ〉)またはシンギュラリティ (singularity) とは、科学技術が急速に「進化」・変化することで人間の生活も決定的に変化する「未来」を指す言葉。
一度でも技術的特異点が起きると、自律的に自己強化し続けるAI(あるいはポストヒューマン)が現れ、技術の進歩が超加速度的になり、人間の文明は極端に変化するため、それ以前の歴史的出来事全ての重大さが0に見えるほどになる[13]。詳しくはASI(人工超知能)を参照のこと。特異点という名付けは、技術の進歩速度が数学的または物理的な特異点に似ているからだという。 (引用:Wikipedia)
技術的特異点(シンギュラリティ)の構成要素
上記説明の様にシンギュラリティとは、技術進歩が加速度的に進み、人類社会を決定的に変える未来を指す概念です。特に「自律的に自己強化を続けるAI」の登場がその中心的な要素となります。
OpenAIが今月にリリースを予定している自律型AIエージェント「Operetor」は、この流れを象徴する存在と言えます。このエージェントは、自らタスクを管理し、障害を克服しながらミッションを達成する能力を備えており、AGIの頭脳を搭載すればシンギュラリティの構成要素を満たしますので、サム・アルトマン氏の指先一つで特異点が発生する状況と言えます。
OpenAIのOperetorによって、単純なオフィス業務はもちろん、複雑な計算やデータベース構築もAIが効率的に行うことが可能になります。この進展により、労働環境が根本的に変化し、日常的なルーティン業務に従事している人々は新しいスキルを求められる時代が到来するでしょう。
人類の課題と希望
サム・アルトマン氏が「Reflections」でAGI完成を静かに伝えた背景には、AIが人類にもたらす恩恵とリスクの両面が存在します。AIは医薬品の開発や環境問題の解決などで大きな利益をもたらす可能性を秘めていますが、同時に、スキルのアップデートを怠った人々にとって厳しい時代となる可能性もあります。
実際、世界各国ではAIの進化により、プログラマーや技術者のリストラ、配置転換が進んでいると言われています。かつて計算機の登場でソロバンが過去の技術となったように、世界各国の無人タクシーに運転手がいないように、AIによって多くが自動化されつつあります。
未来への一歩
サム・アルトマン氏の記事「Reflections」は、技術的特異点が静かに到来したことを示す、人類の歴史において記念碑的なメッセージです。新たな知的存在との共生に向けて準備を進めるべき時期に来ていることを、彼はそっと、穏やかに世界に伝えました。そして、サム・アルトマン氏の指先が動いたその瞬間からシンギュラリティは始まります。
サムアルトマン氏は未来をこの様に伝えています。
「今はまだ、この話はまるでSFのように聞こえるかもしれませんし、話題にするだけでも少し狂気じみていると思われるかもしれません。それでも構いません——以前もそうだったことがありますし、またそうであることに慣れています。これから数年以内に、すべての人が私たちが見ているものを見るようになるだろうと確信しています」
This sounds like science fiction right now, and somewhat crazy to even talk about it. That’s alright—we’ve been there before and we’re OK with being there again. We’re pretty confident that in the next few years, everyone will see what we see
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